絶滅種でごめんあそばせ。2








俺が校内一になったのは、入学式直後だ。
からんできた男に一発とび蹴りを食らわせた。
その男が、実は先輩で、しかも校内最強だったらしい。
ちなみに俺がそんな荒業を繰り出したのにはわけがある。
機嫌が悪かったから。

人だかりをかき分けていき、「クレープふたつ」と言えばいい。
そうすれば両者とも気づくだろう。
俺が東高の番長(これダサいな)河野亮輔だと言うことに。
静まった女をそれぞれなだめて、ゴミ女をそのへんに任せれば一件落着。
なんて賢いんだ、俺。

屋台の目の前までたどりついた。
ギャラリーが俺の存在に気づく、エプロン女達も俺を見る。
その一瞬の静けさの中、俺の目の前で宙を舞う影がひとつ。

バキッ

悲鳴をあげて倒れこむエプロン女。
ざわめくギャラリーの中、俺は何が起きたのか分からなかった。
ただ俺の腕の中には、ものすごい勢いで何かが飛び込んできた。

「もういっぺん言ってみな」

異臭とともに、鋭い声が刺さる。
ふるえあがったエプロン女達は、縮み上がって後ずさりしている。
顔には足跡がくっきりと残っている。

「全員来なさいよ、一対一で来なさいよ」

俺の肩をがっつり掴むと、それを反動にして前に飛び出す。
俺はその勢いに後ろに倒される。

「この卑怯なメス豚が…殺してやる!」

大きな悲鳴をあげて、エプロン女達は屋上から逃げていった。
ゴミだらけの女はひとり、肩で息をしながら立っている。

「おいお前、何東高の番長足蹴にしてんだよ!」

サブが飛び出してくる、が、それを思い切り平手打ちで追い払った。

「いてー!」
「うるさいわね、こっちは今お取り込み中なのよ」
「お、おま、番長に謝れって言ってんだよ」
「謝らないわよ、この人が勝手に出てきたから悪いんでしょ?!」

「おいこの服についた生ゴミ、どうしてくれんだ整備委員?」

俺は立ち上がって制服を指差す。
胸に飛び込んできたおかげで、ぐっちゃぐちゃだ。
女は、はっとして俺をまじまじと見た。

「こ、この方はな、東高最強の、河野亮輔様だぞ」

サブはビビりながらもそう言った。
女はサブをもう一度ひっぱたく。
ギャラリーなど気にせず、ずんずんと階段へと向かっていく。

「ハッ、番長だか船長だかしんないけど、ゴミまみれならついて来なさい」

自信満々な女に唖然とする。

「つか、てめぇが原因だろ!!」


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