はじまりは、男の楽園である女子高の文化祭だった。
顔良し頭良し性格よしの完璧人間の俺、河野亮輔。
パシリ体質のチャラい女好き、横田三郎。
おっとりしすぎてうっとおしい、葉月春一。
俺たち三人は、そこでおきた事件を忘れない。
女の名前は冴島るか。
俺の青春をふりまわす、根性だけがとりえの女。


絶滅種でごめんあそばせ。


「やっぱ俺、来なきゃ良かった」
「亮くん、そういうなって」
「さっきから女がうっとおしい」
「しょうがないでしょ、亮くんモテるんだから」

チャンスとばかりに甘ったれた声をかけてくる女子高生。
すべてふりはらって歩くのは面倒だ。
俺には今とりあえず女は必要ない、面倒だからだ。

「亮くん、屋上のクレープ食べに行こうよ」
「なんで」
「女の子がいっぱいいるからよーん」
「しんじまえ」

それでも俺の腕をひきづっていくサブは乗り気だ。
さっさと屋上に連れて行かれてしまう。
さんさんと太陽の照る屋上は、いろとりどりの花があり、
クレープ屋台の前には女がたくさんならんでいる。

「見て、あの子超かわいいんだけど」
「あー、お前の趣味俺にはわからない」

まわりの女は俺に気づいて、ざわめきはじめる。
女の目は、オスを見る目に変わる。
それが俺にはどうにもいやしくてたまらない。
でも、そのいやしい目にさらされてる俺が嫌いじゃない。
男なんてそんなもんだ。

ふいに、屋台の前でざわめきが大きくなった。
なんだなんだと野次馬根性を発揮したサブは、俺をひきづって歩き出す。
嫌がる俺を尻目に、サブは中心を見られる位置までもぐりこんだ。


「ちょっとー、何すんのよー」
「なんなのこのゴミの処理の悪さは、さっさと直して」
「うるっさいな、今仕事中なんだから黙っててよ」

エプロンをした女に、腕章をつけた女が何か注意しているようだ。
エプロンは聞く気を持たず、とうとうキレてゴミ袋を投げつけた。

「あんたただの整備委員でしょ? さっさとゴミ片付けてよね」

制服に投げつけられたゴミは飛び散って、腕章の女はぐちゃぐちゃになった。
屋台の女達は、くすくす笑う。
腕章の女は、何も言わない。

「さっさといけよ、ゴミ女」
「だいたい整備だからってエラそうに指図してんじゃねぇよ」

屋台の女達はあからさまに女をけなした。
これは今の女のした行動だけにつけた因縁ではない。
どうやら、日ごろの恨みをここぞとばかりに集中してぶつけているようだ。
周りの同級生は何も言わずに、おそるおそる見ている。
俺はこういうシチュエーションが、大嫌いだ。

「なんかすげぇムカつくから、ちょっと行ってくる」
「おぉ! 東高の番長河野亮輔が登場か!」
「うっせぇな」

俺はサブを押しのけて、輪の中心へと進む。


NEXT?