「比奈地さ、ネットの書き込みとかって見たりするの?」
「見ないです、あんなのガセネタの宝庫でしょう」
「あー、言うと思った」
最近犬島が先輩に夢中で、俺に相談ばかりする。
あまりにもうっとおしいので、俺はその道連れにひとり仲間を増やした。
それがこの人、ちょっと情報に通じすぎの嫌いのある部活の先輩。
名前は小杉秀介、見た目は温和で知的だけど、どうだか知らない。
油断ならないタイプの男だ、男の勘だ。
そんな先輩に、俺は吾平の学校の事件ことを相談した。
小杉先輩はこの事件については知っていた。
そのおかげで、誰も先生に相談していないという新しい事実を知った。
だから俺はもっと踏み込んで、聞いてみた。
幼馴染は襲われてはいないが、もっと心配なことがあると。
小杉先輩は少し驚いて、ネットの書き込みの話をした。
俺はそういうのが嫌いだから、ばっさり切り捨てる。
すると小杉先輩は、こう言ったのだ。
「比奈地ってさ、思い込みが激しいタイプでしょ」
「な…」
「まぁ見た目から判断してるだけだから、あまり気にしないで頂きたいけど」
「小杉先輩ってすごいですよねー、俺皐月先輩の性格について聞こうかなー」
「犬島も怪物部長の溺愛してる女に惚れるなんて、大変だよね」
「愛は盲目ですから!!」
「…俺の話はどこへ」
「あ、そうだった、そうだね、君は我が道しか見ないタイプだから」
「あー、わかりますねー」
「そこのうすら馬鹿、少し黙ってろ」
「その意味は、マイペースって意味じゃないの、わかる?」
「はぁ…」
「まぁよく言えば意志が強い、悪く言えば思い込んだらそれしか見えない」
「あー、そのまんまですねー」
「そこの先輩に首ったけのでかいのは黙ってろ」
「…比奈地今日ひどくない?」
「とにかくよく周りを見たほうがいいなぁ、君は」
「…」
「ネットってのは確かに信憑性はないけど、わかってくることもあるんだよ」
「…わかりました」
「あきらかに不服そうだね」
「別にそんな…」
「僕が言いたいのは、幼馴染ってことで周りが見えなくなるのが恐いんだってこと」
「はぁ…」
なんだか俺に対してのアドバイスばかりだ。
俺は弁当箱に残っていたご飯粒をつまんだ。
家に帰った俺は、親父のパソコンをつけて、ネットを開いた。
城崎女子の掲示板が見つかって、それをクリックする。
掲示板は、あの事件の話で持ちきりだった。
No.164 アイコ
体操部は毎年、いじめに遭う子がいるって話。
去年の先輩もいじめにあって、みんなの前で見せしめに自分の髪の毛切り落としたんだって。
だから今度もたぶん、いじめの復讐だよ、絶対。
No.165 名無し
名門城崎女子体操部マジ恐し。
No.166 赤牛
じゃあ襲われた体操部のヤツみんな自業自得じゃん。
だから誰もチクらないんだ、馬鹿みてぇ。
No.167 マナミ
でもなんでカバンぶちまけんの?意味分かんない(*-*)
だって閉じ込めるだけでよくない?何の意味が案のカな?
No.168 ヒロキ
なんか探してるって噂だけど、それっていじめとは関係ない気が。
No.169 アイコ
なんかいじめのときにとられたとか!!
じゃなきゃ壊されたりと貸した恨みだね、間違いない☆
No.170 名無し
じゃあ犯人の狙い華んだ??????
俺には環からナい。
名無しの言うとおりだった。
この事件の犯人の狙いが分からない。
だから俺はまだ、心のとげを抜けずにいる。
俺はパソコンを閉じて、ベットに寝転んだ。
そうしていつの間にか眠っていた。
吾平が襲われたというのを知ったのは、その三日後だった。
NEXT?