原因は簡単だった。
部活にばかりかまけて、彼女に会わなかった和馬。
彼女はなんども和馬を呼び出そうとした。
「会いたいの」
「ねぇ、部活休みの日、ないの?」
「遊んで」
でも和馬は部活に自分を尽くしていた。
いつだって一番最初に視界にいれていたのは部活。
彼女はきっとほとほと疲れてしまったんだ。
好きな彼氏の彼女は、部活なんだって。
そうして彼女は、和馬から離れていった。
和馬には、もうどうしようもなかったんだろう。

「馬鹿ね」
「なんだよ、俺は真面目に話したじゃん」
「馬鹿よ、馬鹿 君はなんて馬鹿なんだ…」
「馬鹿馬鹿言いすぎだよ…」

和馬は眉間にしわを寄せて言った。
和馬の顔は童顔なのに、そうやってしかめっつらをするくせがある。
そのくせは、なんだかとってもきれいじゃない。
でも彼はいつもそうやっている、彼のちいさきときからのくせ。
だから私は、そのくせをやめろとは言えないのだ。

「だってね、そんなふうに部活ばっかりだったら彼女もふるよ」
「でもさ…試合とか、練習試合とか、練習とか、いろいろあんだよ」
「なんかごちゃごちゃしちゃって、よくわかんないよ」
「それに…俺、マネージャーにもなんかつきまとわれてて…」

ふわふわ、と言ったのはそのマネージャーの後輩みたいだ。

「メールがいっぱいくるのね、あと電話とか」
「ふーん」
「…白い目で見るなよ」
「だってそんなことしてたら彼女に怒られるでしょ」
「もう怒られた、何度も」
「…君は本当に彼女の怒りのつぼを全部おさえちゃったのね」
「…」
「あー、ばっかだなー、そんでふられちゃうなんて 笑わせるぜっ」

私は笑ってふりかえった。
和馬は眉毛をハの字にして私を見ていた。
本当にこの子は、馬鹿なんだから。
私たちは映画館に入る。
冷房のついた館内は涼しくて、私は思いっきり手を伸ばしてくるくる回る。
和馬は少し呆れたみたいにエレベータのボタンを押した。
焼けた肌、部活の賜物。
彼がそのために彼女にふられてしまった理由。
私まで、なんだか哀しくなってしまう。


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