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君はあたしのことなんてわかってない
僕は君のことばかり知りたい
君はあたしのこと本当に好きなの
僕は君のことならすべて好きだ
君はあたしに泣かされていやじゃないの
僕は君のことならどんなことしてでも知りたい
あたしは君の思ってるような人じゃないよ
僕はそんな君だって知りたいんだ

変質的なふたりの、かぎりなく美しい歪んだ恋愛物語。


DOG*BLUE


あたしがすべてを捨てて、超田舎の女子高に転校したのは数ヶ月前。
寮制のあるこの高校は、みんなのどかで過ごしやすい。
時間もゆったり流れているし、緑もいっぱいだ。
何より級友があたしの過去を知らないことが心地よい。
あたしの名前は、倉田涼夏。

ここは地元から通っている子も多くて、みんな自転車移動だ。
あたしも叔母さんに買ってもらった新しいアオミドリの自転車がある。
それはとてもきれいな車体で、あたしはよくそれででかける。
寮生といっても、外出は結構自由だ。

ここちよい風に吹かれながら、あたしはこの町を感じる。
草木の生臭いにおい、川辺の生物のにおい、風のやさしい感触。
あたしは昔誕生日に買ってもらったウォークマンを聞きながら走る。
それは、自分がとても美しくなったみたいな間隔に陥る。
それが嘘だって分かってるけど、それでもあたしはその一瞬きれいになる。
橋を渡るとき、あたしは自転車をとめて立ち止まる。

そこでいつもいつも見る顔があった。
あたしと同い年くらいの男子で、いつも学ランを着ている。
その人はいつも川辺の同じ場所で自転車をとめている。
黒髪でさらさらした髪が、風になびかせながら座っている。
彼の表情はいつも澄んでいて、きれいでやさしい瞳をしている。
あたしはその姿を横目に見ながら、橋をわたって学校へ帰るのだ。
ただそれだけだけど、あたしは彼に何か感じていた。



その少年が今日は立ってどこかを見ていた。
あたしは少し気になって、しばらく彼を目で追った。
不意に彼は目をつぶった。

そうしてそのまま倒れこんで、川に落ちた。

「嘘…っ」

あたしは驚いて自転車を転がした。
ぎりぎりのとこまでこいで、急いで階段を駆け下りる。
少年のいたところには、カバンと自転車だけがぽつんと置いてあった。

大急ぎでそこまで走ってまわりを確認する。
あぶくだけがころころと浮かんでいる水面にあたしは叫んだ。

「大丈夫ですか、大丈夫ですかっ」

こんなところで、誰かに死なれたくない。
あたしのまわりの死神は、この人にまで何かするの。
せっかく、穏やかな生活を送れるようになったのに。

あたしはいつしか必死になって叫んでいた。

こぽこぽと音がして、白いシャツが姿を現す。
あたしは驚いてあとずさりした。
少年は仰向けになって浮かんできた。

なんだか拍子抜けだった。
それなのにあたしは、どきどきする自分の胸をおさえられなかった。
いきていてくれて、よかった。



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